小骨の欠片

まめかんの日常。

AKB48ドキュメンタリー感想

新年早々、昨年からずっと気になっていた「DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら夢を見る」を鑑賞。
先日たまたま見つけた宝塚の舞台裏も、ジャニーズの舞台も、このAKB48ドキュメンタリーも“Show must go on”が一つのキーワードになっていて、それも非常に興味深かった。
AKB48の見せる“リアル”なショーの裏側を見ながら、前者二つの“見せない美学”に救われてきたことに改めて気付かされる。
つまり、簡単に言うと、なかなかきつい、との噂は聞いていたが正直予想をはるかに超えた映像だったのだ。
事前にお伝えしておくと、AKBに関してはいわゆる茶の間で、メディア選抜は顔・名前・キャラクターくらいは一通り知っているけども、女性アイドルには全く詳しくない。
 
観終わってすぐのツイートを編集抜粋。
“今更ですが、『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る』を見て号泣。 泣き所は設定されているんだけど、そこ以外でも泣けて仕方なかった。こんなにわけもなく涙がこぼれる映像は久しぶりでした。”
“たぶん、わたしがアイドルを好きだからなんだと思う。本当にね、“ムゴい”映像だった。 総選挙の裏側にある慟哭、酸欠と熱中症で倒れる女の子たち、過呼吸になりながらステージに上がらなければならないセンター、男性とのプリクラ流出騒動で謹慎になった昇格研究生。そこを編集してDocumentaryとして映画にする運営の思惑に思いを馳せずにはいられない。”
“映像自体も“ムゴい”けど、それよりも映像編集(≒運営&秋元康)側の意図も“ムゴい”し、それを出させてお金にさせてしまうファンの存在も“ムゴい”ものなのだ、と思ってしまった。
ただ、“ムゴい”ながらも彼女達をすり減らしながら撮った映像には、確かに力があって。露悪趣味なんだけど、露悪趣味で片付けられるようなものでもなく。そういうのがごっちゃになって、わけもわからず泣けてくる。”
“分かりやすく泣けたところだと西武ドーム公演の初日と二日目。初日は「AKB史上最低のコンサート」。それを立て直そうと必死でリハを行う二日目。あっちゃんは重圧からかリハからずっと過呼吸。でも、総選挙で返り咲き、センターをとったフライングゲットを歌うときにはどうしても出ていかなければいけなくて。ステージ裏では数秒前まで行きも絶え絶えだったあっちゃんは、過呼吸のまま、必死で挨拶をする。それをフォローする他のメンバーと、離れていたのにすっと隣に立ちあっちゃんに呼吸をさせ、お辞儀をさせるたかみな。でも、イントロが流れた瞬間、立つのも必死だったあっちゃんはやや引きつってはいるものの、変わらぬ笑顔で踊り始める。”
“さらにアンコール。あっちゃんが過呼吸で動けず、メンバーも過呼吸熱中症で倒れる舞台裏。ここまでコンサートを支えてきた大島優子も、過呼吸気味で「なんにもわからない」と半ばパニック。そして、もう一人の屋台骨たかみなも視界が朦朧としていて、明らかにおかしい。それでもたかみなは責任と気力だけで「MCしゃべれますよ」と言って出ていく。そのあとすぐ、スタッフがすごく冷静に「たかみなそろそろ倒れますよ」って言っていて。その冷静さに寒気がした。”
”同じく満身創痍の大島優子と2人で、あっちゃん不在がマイナスにならないように、かばって出ていって走って声張ってMCをまわしていて。で、そんな中でも、最後の最後、裏でスタッフに「出なくていい」と反対されながらも、あっちゃんがどうにかステージに戻ってくる。そして終わったとたん、たかみなは本当に倒れて、スタッフは「意識はあるので大丈夫です」と言う。”
”なんかね、こういうところに“ムゴい”なってすごく思ってしまった。彼女たちの責任感や夢に胡坐をかいてる(ように見える)運営も、ファンの期待と歓声すらアイドルを傷つけていることも、それを見せることも。この映像がすべてでもないけど、本当に罪深い映像だなと思った。”
“アイドルは運営とファンの欲望に動かされるマリオネットって、こういう映像を“ドキュメンタリー”とした秋元康は本当に罪深いよ。ただ、映画自体は AKBに興味がない人ほど、映像として楽しめるんじゃないかなと思いました。まさか、アイドルのドキュメンタリーがここまでグロテスクな映画だとは思わなかったし、前作より圧倒的に“見られる”映像。”
“3時に語ることでもなかったけど、見るの迷ってたら見る価値があると思う。ただ、これを見るとAKBメンバーは好きでも、AKB陣営は嫌いになる。歌番組で笑顔を振りまく姿を見てるほうがよっぽど幸せで楽しいし、気軽にファンになりたいと思うな。”

これをきっかけに女性アイドルやAKBって何なんだろう?わたしは彼女たちをどう見てるんだろう?ってことをぼんやり考えるようになった。
AKBのパフォーマンスはあんまりツボに入らないけど、メンバーはいい子たちだなぁと思うし、可愛い!って思うときもあるし、この子好きだなぁと思うときもある。もともときらっきらしてる女の子は大好きだ。
このドキュメンタリーの主軸の一つ、2011年の選抜総選挙におけるあっちゃんの名演説。「私のことが嫌いでも、AKBのことは嫌いにならないでください!!」に習うのであれば、「あっちゃんのことは好きだけど、AKBのことは好きにならないんだよな」というのが、わたしの正直な気持ちだった。
AKBが売れて、アイドルの主流ともてはやされ、メンバーも好きなんだけど、どこか拭えない拒否反応は何なのだろう。
今回のドキュメンタリーは、AKBが売りにしている「ガチ」や「リアル」のぎりぎりまで踏み込んだ映像だと感じていた。
だとするならば、AKBにいる多感な少女たちを「ファンと運営が追い詰めるから輝き」その輝きを「ファンと運営がくいものにしている」ことがAKBの最もリアルな形だと言うしかない。
もちろん、他のアイドルグループにそういう面がないとは言わない。これはアイドルに共通してる構造だし、みんながぼんやり感じてた裏側だと思うから。
ただ、それを“エンターテイメント”として差し出してくる運営を積極的に後押ししたいとは思わない。これからもついついお金を落とすだろうし、野次馬にはなるだろうけど、ファンになるほどの覚悟はないなぁと改めて思ってしまった。
たぶん、わたしのAKBに対する拒否反応は、どうしても“少女達が傷つけられながらも、最も輝いている瞬間を味わい楽しんでしまう”自分に対する拒否反応だったんだろうと思う。
「ガチ」や「リアル」はたしかに面白い。人間の極限の状況、彼女達の貴重な時間と感情を費やして生まれるものだから。そして、たしかに「ガチ」や「リアル」はアイドルには欠かせない要素だと思う。ただ、それは、あくまでも付加的に語られるものであって欲しかった。そう思う。
そして、秋元康のアイドルの人生こそがエンターテイメント、という考えはとんでもなく的を射ている。
途中で大島優子前田敦子の共通の夢として、“女優”と“一緒の舞台に立つ”ということが語られていた。これも、改めて考えると衝撃的。総選挙の裏側で慟哭し、血反吐を吐くような思いでセンター争いをしていた2人の夢は、“アイドルの頂点”じゃなくて“女優”。
女優をやりたい人に、アイドルとしてのその人を求めるのは歪な構造じゃないのだろうか(もちろん、それがプラスな部分もちゃんとある)。だから、アイドルに憧れ、アイドルになりたかった指原が4位になったのはAKBとAKBファンにとって、すごく大きな意味を持っていたし、薄暗い空気をとっぱらい、さわやかな風が吹くAKB次世代の象徴になりえたんじゃないかと思った。アイドルの夢を持つ女の子がアイドルとして輝く瞬間は、とってもまぶしいものだ。
そしてもう一つ。アイドル業が全部楽しいなんて思わないけど、彼女たちは自らの存在意義を被災地ではなく西武ドームに見つけられないの?と思ってしまった。意図的な編集かな、とは思うけども、もしも、もしもそうだとしたら、それはものすごく悲しい。
だから「コンサートの演出をしたい」と語る宮澤佐江ちゃんに少し救われた。
 
女性アイドルの儚さと悲哀、Documentaryに決して描かれないことで浮き彫りにされるAKB運営の醜さを“リアル”だというAKB48AKB48は国民的アイドルと呼ばれながら、とんでもなく異端のアイドルだ。
そして、この映像を“リアル”“ガチ”と示した秋元康は、果たしてその罪深さを背負う覚悟を持っているのだろうか。
少なくとも、これ以上悲しいアイドルドキュメンタリーが撮られないことを祈る。どんな少女であっても、アイドルの物語は彼女たちの青春に見合った、誰から見ても美しい何かで彩られて欲しい。切実なまでのこの気持ちは、彼女たちを消費した自分をごまかすための欺瞞なのかもしれないが、それでも願わずにはいられない。
 
次回は、この感想をひっくり返す希望に満ちた一冊の本と、その感想について。
そして、矛盾するようだが、わたしはアイドルに興味があるならば、この映画をぜひ見ていただきたいと思っているし、非常におすすめ。
ともかく、メンバーにどんどん情がわく。中でも、あっちゃん&大島優子&たかみなの3人はさすが!の一言。あっちゃんのセンターとしての孤独、大島優子の現状把握と客観性、たかみなのグループ全員、個人個人を見る目配りには圧倒される。残り2人が卒業する日が想像できないくらい、2人に依存しているグループだなぁと思った。
あとは、ゆきりんがとても良かった。チームリーダーを務めた経験が活きたのか、人を育てるのに向いている子だと思うし、今後さらにAKB48の核になっていきそうで先が楽しみ。
運営とAKBの仕組みには言いようのない悲しさを感じた私でも、メンバー個々の好感度はちゃんとあがるのでそこはご安心を。笑
また、被災地支援の映像で映りこむ沢山の笑顔と、彼女たちの笑顔はとっても素敵だった。それだけでも、色んな人に見て欲しいと思う。