小骨の欠片

まめかんの日常。

映画『図書館戦争』感想

 面白かったー!原作好きの身からしてもおすすめ!
 とはいえ、この映画化が100点満点かと言われると難しい。120点をたたき出している部分もあれば、75点の部分もあるなぁというのが率直な感想。
 少なくとも、良質なラブコメであり、エンタメなので、見て損するようなことはないし、食わず嫌いせずに見てみたらいいんじゃないかと。
 ここから先は映画&原作のネタバレがあるのでご注意下さい。
 大丈夫な方は続きからどうぞ!


■120点をたたき出したキャスト陣
 原作の核となる魅力を大別すると2つに分けられると思う。1つはキャラクターの魅力。もう1つは、言論規制から図書≒思想と表現を守る、荒唐無稽ともいえるような舞台設定自体の魅力

 今回の実写映画化は、1つ目のキャラクターの魅力を的確に表現している点がとても良かった。設定に一部大幅な変更があったけども、これは有川浩さんの要望なのかな。というか、そうじゃなかったらこういう設定にならないよなぁ。と思ったら、記事があがってた。
石坂浩二、亡き“兄貴”児玉清への思いを吐露 | シネマカフェ cinemacafe.net

 キャストもほぼほぼハマり役。特に主役2人と柴崎、司令の4人は予想を裏切らないハマり役。 
 あとは、監督と脚本の判断だと思うけど、サブキャラクターまで欲張りすぎず、あくまでも主役である堂上と郁の2人のキャラクターと関係性の変化に的を絞ったのも高評価。堂上教官は男前だし、郁は一生懸命でかわいいし。堂上と郁のじれったくて恥ずかしくて不器用な関係の変化を丁寧に描いていたので、ラブコメ部分は原作の雰囲気そのままですごく良い!
 反面、小牧と手塚のキャラがみえにくいというか、ぼんやりしてしまったのは残念。特に小牧は腹黒っぽいというか、小牧のしたたかな参謀的魅力があまり描かれなかった。全体的に毒がなく、好青年&都合の良い進行補佐になってしまっていたような気が。

 とはいえ、柴崎・司令・隊長・折口さんの4人は印象的なシーンがきっちり入っていて、キャラクターの性格が伝わってきたし、全部が全部物足りないというわけでもないし、映画版小牧もこれはこれで可愛い。

 ストーリーやエピソード・セリフの抜粋の仕方を見るに、作り手の意向としても潔く取捨選択をして欲張りすぎず、まとめ上げてテーマを伝え、空気感を成立させることを優先していると思われるので、このあたりのバランスがベストだったような気がする。

 全体の感想としては、大好きなキャラクターたちが作り出す空気が画面の中に存在した感動。これが本当に期待以上。また、岡田准一を起用したことによって、対人格闘シーンがものすごく締まっていた。銃撃戦やってるのもったいない!と思うくらい、格闘シーンに見ごたえがあった。郁がドロップキックをかますのもすごく良かったし。このあたりの迫力とスピード感、テンポの良さは映像ならでは。


■舞台設定のリアリティーにやや欠ける
 キャストとキャラクター描写が120点だとすると、後者の舞台設定の魅力は75点。
 図書館“戦争”のタイトル通り、この作品では銃撃戦を中心として、生々しい戦いが繰り広げられている。なんていうか、バカみたいに強いヒーローが現れるわけでもなく、基本は火力でお互いの数を削る消耗戦。日本で生身の人と人が容赦なく銃を撃ち合う光景は、映像で見ると予想以上に生々しく、遠かったはずの“戦争”を近く感じさせた。この生々しさと迫力ゆえに、銃撃戦の激しさ、恐ろしさが非常に印象に残った。

 戦闘シーンに生々しさ、恐ろしさ、規模の大きさを感じられたことは作品の魅力だと言えるけども、かえって映画版の世界観にリアリティーがないなぁと感じてしまう理由でもあった。具体的に言うと、図書のために、日本人同士がここまで激しい銃撃戦までするか?というありえなさ(精神面・財政面共に)が強調されたことと、(図書隊はともかくとして、特に検閲側で)命をかけて戦おうとする兵士が何人いるんだろうか、というありきたりな疑問が浮かんでしまった。
 そもそもメディア良化法案が通った、という設定に対する違和感もかなりのもの。
 日野の悪夢がかなり残酷なテロ事件として描かれていたために、メディア規制を理由にそこまでやる狂信者(や政治派閥)はいるのか?という疑問も浮かんでくるし。

 原作では、小説ならではの手法で私が挙げたような違和感に先んじてツッコミを入れ、理由付けがされていたと思うけど、映画では同じようなセリフがあってもかなり説明不足&理論武装が弱く感じられた。
 警察の日和見政治的なあれこれ、野辺山の資料等々、メディア良化法案には裏がいろいろあるとほのめかしていたけども、最後まで全ての理由付けが曖昧な印象。もう少し、図書隊とメディア良化法側の武力闘争が成立するロジックや政治、仕組みの点に、納得感があって歯切れのよい舞台設定の解説がほしかったかなー。

 その違和感を解消するためにも、“戦争”とはいえ、情報戦とか、駆け引きを軸にすえて、最後に幕引きとしての銃撃戦がある、くらいが実写で見るのにいいバランスかなーと思った。お互いの派閥にとっても武力闘争が本質じゃないと思うし。その場合、だいぶ地味な映画になっちゃうけどね(笑)

 あとは、メディア良化法案が通ったことで、どのような問題が起こっているのか、どのような不自由を強いられるのか、あるいはどんな利点があるのか。フィクションであること、映像だということを活かして、Ifの世界をもう少し感覚的に示してほしかった。
 言論規制があるということは、メディアがどうなることを意味するのか、っていう部分を様々な角度から切り口で考え、読む権利、表現と思想の自由の大切さを実感できる点もこの作品の魅力だと思うし。もちろん、伝えようとしてくれていたとは思うけど、効果的なシーンが見当たらなかった気がする。見計らい権限の下りが比較的分かりやすく感情移入しやすいシーンだったと思うけど、伏線の要素が強かったからかメッセージ性に欠けた印象。

 とはいえ、この映画の根幹ともいえる、図書隊側が命をかけて図書を守ろうとする理由・意義については丁寧な伏線と、演技の相乗効果でとても効果的に提示されていて、グッと来た。

 結論としては、手塚のお兄さんが必要だった、ってことかな。彼がいないことで、舞台設定や図書隊の在り方に対する客観的な批判・ツッコミ・現実に即した打開策の視点が欠けていて、作品の深み(正義と悪、と簡単に割り切れない構図の中で選び戦う主人公の図)が失われていたような気がする。一巻を下敷きにしているので難しいかもしれないけど、やっぱり手塚兄的な登場人物は必要だったと思うな。
 
■まとめ
 有川浩作品ならではの王道ラブコメを期待されている方には、心からおすすめしたい作品。実写化の堂上教官はほんとずるい!チビで、不器用で、正直者で、郁の動向に思わず揺らいじゃうけどピンチになると駆けつけて、体張って守ってくれる、とかヒーローにも程がある!笑 惚れます。
  
 逆に、図書館戦争のテーマ性、問題提起に魅力を感じている方は賛否あるかもしれない。役者さんの演技があるからこそ響くシーンもあれば、小説だからこそ良かったシーンもあるので、そのあたりのジャッジは難しいかなぁ。この部分については、続編の制作があることに期待。二作目になったらテーマ自体もかなり掘り下げられるし、濃くて深い作品になりそうな気がする。

 ここまでつらつらと書いてきたけれども、実写化映画としてのクオリティーは高いし、元気と胸きゅんをくれるので、GWにもぴったりな作品じゃないかな。ほんときれいにまとまっているし。

 私も映画の図書隊の空気感がすごい好きだったので、時間見つけてもう一回観ようと思ってます。
 原作も面白いのでこの機会にぜひー!リンクは文庫だけど、文庫が待てなくて、初版をハードカバーで買ってるくらい好きですw ちなみに、スピンオフは図書隊員の恋愛に特化してるので甘ったるいのが読みたければ本編+スピンオフもおすすめ!

 もうDVDもBlu-rayも出ているようなので、ぜひぜひそちらを観ていただければと思います。

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