小骨の欠片

まめかんの日常。

図書館戦争『THE LAST MISSION』感想

先日の3連休に、図書館戦争『THE LAST MISSION』を見てきました!
2回観ても見飽きない、なんならもう一回見たい!というたまらない映画でした。
というわけで、感想を少し。

この先、映画のネタバレしかありませんので、ご覧になっていない方はお気を付けください!
大丈夫な方は、続きからお付き合いください。


今作は原作小説の3巻を下敷きにして作られていて、
手塚兄をはじめとする第3者の目線から、図書隊の存在意義を問われるような作品になっていた。

これが映画として本当によかった!!!


映画版の導入とも言うべきSPドラマ

今回の図書館戦争続編の大ヒットはSPドラマの功績も大きいんじゃないかと思う。
原作2巻を下敷きにしたSPドラマは、これだけでもう一本映画作れるよね!?というクオリティーの高さ。

小牧が鞠絵ちゃんに「もう子供に見えなくて困ってる」と囁くシーンは、今年一番と言っても過言でない盛り上がりだった気がする。
カッコよすぎる小牧の影響で、私の周りでは、田中圭くんの人気が急上昇してます(笑)

ちなみにSPドラマ観ずに本編観た時に、郁の両親出てこないの!?小牧と鞠絵ちゃんはいつ付き合ったの!?と若干ついていけなかったので、
必ずSPドラマ観てから行くことをお勧め。

すでにDVDのレンタル、販売も開始されているそうです。


図書隊にツッコミを入れる"手塚兄"

前作の感想で、実写化したことで(アクションや銃撃戦に力を入れたがゆえに)、かえって図書隊の設定にリアリティがなくなってしまった、と書いたのだけれど、今作は観客と同じ目線で疑問を投げかける手塚兄がいることで、グッと見やすい作りになっていたように思う。

"図書隊はなぜ戦うのか"
"武力によって本を守ることは正しいのか"
"図書隊は良化隊と変わらないくらい歪んだ組織なのではないか"
"図書隊が命を懸けて本を守ったところで、世界は何も変わらない"

手塚兄の問いかけはシビアだけど、正論でもある。
しかも手塚兄は、武力以外の方法で検閲を終わらせる方法を模索し、実際に行動にうつして、彼なりに成果もあげている。
素晴らしいやり方かと言われるとそんなことはないけれど、決して口先だけの男ではないんだよね。
だからこそ、手塚兄の問いかけは、"図書隊として本を守る"という郁の気持ちを揺さぶる強さを持っている。

手塚兄は圧倒的なカリスマ性を持っている役柄だから、観るまではどうなるんだろうと少し思っていたけど、松坂桃李くん演じる手塚兄は、演説シーンがことごとく魅力的。素敵なキャスティングだった。

黒幕として暗躍しながら、図書隊・検閲抗争に先んじてツッコミを入れて観客を導き、主人公たちの主張、主題を輝かせてくれる手塚兄。
唯一のウィークポイント、弟に触れたときの逆鱗っぷりもまた魅力。

超絶働き者な手塚兄なくして、図書館戦争続編は語れないと言っても過言ではない。


茨城県展の大幅改変

原作の3作目を下敷きにして作られていると書いたのだけど、実写化するにあたって大きく改変されていることがある。

今回のメインエピソードである、茨城県展に絡む戦いの設定だ。

原作では県展の目玉は"良化隊の制服を切り裂いたコラージュ作品"であり、武力衝突の舞台も県展の会場だった。
原作における茨城県展での戦いは、良化隊が自分たちの誇りを守ろうと、鬼気迫る勢いで向かってくる様子を生々しく描いており、良化隊側にも何かしらの強い信念があること、また、良化隊もある種の理不尽と戦っている生身の人間であることを訴えかけてきた。

波紋を呼ぶコラージュ作品については、手塚兄が弟に向けて「お前も制服を着てる人間なら分かるだろう」と言ったことも印象的で、
"表現の自由"のために、他者の誇り(信念や精神と言い換えていいかもしれない)を踏みにじる歪みをも考えさせるようなエピソードに仕上がっている。

一方、映画では図書隊の象徴である「図書館法規要覧」を茨城県展に貸し出すこととなり、茨城県の図書館を舞台に法規要覧を守ろうとする展開になっている。

この改変が示すように、同じエピソードを扱いながらも、図書隊が撤退戦を繰り広げる中で、"本を守りたい"との気持ちを奮い立たせ、図書隊たる誇りを守るという、真逆なテーマへと改変されている。
防衛部の弱体化を切り口に、"カミツレ"の話が繰り返し出てくるのも、テーマの強化に他ならない。

他にも未来企画関連や、仁科司令(原作の稲嶺司令)勇退についても改変が入っているし、茨城県展の改変については賛否あっておかしくない。
というか、あって当たり前だと思う。

改変があったことで、後半の良化隊必死すぎない?とか設定の甘さが気になった部分もあるけれど、私は変えてよかったと思う。
それくらい、クライマックスの笠原郁の映像は、映画ならではの魅力が詰まっていた。


走り続ける"笠原郁"

「図書館法規要覧」を県展に届けるクライマックスのシーンは、ベタなんだけどそれが良い!
流れを追いつつ、好きなところについて書いていきます。

①肉弾戦がむちゃくちゃ強い堂上教官
良化隊に囲まれても強引に突破していく無敵の堂上教官。
郁も市街地で一人は確実に沈めてるけど、いかんせん堂上が強すぎる。

②無敵の堂上教官、郁を庇って撃たれる
郁に向かって発砲しようとする良化隊員を見た途端、とっさに走り出す堂上。
そして響く銃声!その後何発食らっても全く倒れず、敵を倒す無敵の堂上。
ベタ!!!だけどカッコいい!
まあ、なぜ良化隊は市街地で発砲してしまったんだ、というのはあるけれどw
無線でもめっちゃ怒られてたし。
肉弾戦やってる時の堂上が怖すぎる&強すぎるから仕方がなかったのかもしれない……。

③瀕死の堂上を運びこむ先が"あの"書店
高校生の郁が"王子様"に助けられた思い出の書店。
偶然にもその書店に戻ってくることになった2人。
堂上が「もう俺がいなくても大丈夫だ」と郁の成長を認めて、送り出すところが本当に好き。

郁が書店を飛び出していく時の映像は、堂上が見計らい権限を使った時と同じ演出。
眩い光に向かって走り出す郁が、あの時の堂上の背中と重なる。
郁が堂上のもとから巣立つ瞬間でもあり、見送る堂上の表情もとても良い。
このキスシーンは、原作の最終巻をもとにしていたので、ここで使うのか!という驚きもあった。
キスシーン含め、郁のカッコよさに惚れる!!

④走り続ける"笠原郁"
堂上に「お前は走れ」と言われていた郁なのだけど、
この走り続ける"笠原郁"こそが、"笠原郁"や図書隊の在り方であり、映画版全体を貫くテーマになっていた。
様々な改変をしながらも、軸をぶらさず、このラストへ繋げた潔さがよかったと思う。

もっと賢いやり方はあるのかもしれない。
もっと平和なやり方があるのかもしれない。
けれども、"今"焼かれていこうとする本を守れるのは、図書隊であり、郁なのだ。
自分たちが正義の味方とは言い切れないと自覚しながら"今"を守ろうと走り続ける。
 
郁の思い、図書隊の存在意義。
それらすべてが必死に走る郁の姿だけでストレートに伝えられたように思う。
原作よりもさらにシンプルに作られた映画だからこそ、強く響いた。
 
図書隊だって綺麗ごとだけで成り立っている組織ではなく、原作では図書館内の派閥争いも細かく描かれているし、
王子様への憧れだけで飛び込んだ郁も、徐々に図書隊が一枚岩ではなく、汚い手を使うときもあるし、歪んだ部分もあると知っていく。
 
そうやって白黒はっきりつけられない世界で、一つを選び、信念を持って、"走る"。
私は、それこそが、"笠原郁"の、図書隊の、ひいては図書館戦争の魅力じゃないかと思っている。


映画本編のまとめ
 
今作は、図書隊目線にかなり寄せてはいるものの、図書隊に傷つけられた良化隊員の印象的なカットを差し込む等、バランスをとる工夫もされている。
原作同様、観る人に校閲がある世界や、"図書隊"の存在意義について改めて問いかけるような映画になっていて、決して何かしらの正解を押し付けては来ない。その距離感が好ましかった。

また、アクションシーンも相変わらず素晴らしい。
銃撃戦は撤退戦ということもあり、正直観ているのは辛いけど、格闘は大迫力で見ごたえがある。
岡田くんいわく、今回は"生っぽい"リアルなアクションにこだわったとのことなので、その辺りも見どころ。

ただね、しょうがないんだけど、細かく見るといろいろカットされてる!!!
それゆえに、全体的に思いのほか甘さ控えめな仕上がりになっていて、SPドラマを観てきた人は物足りなかったかもしれない(笑)

原作には、査問会が終わった後の堂上と郁の甘ったるいやりとりとか、
茨城基地の女の子からいじめられて弱った郁が「いつものやってください」って頭ポンポンしてもらうシーンとか、
映画で描かれていないシーンも色々あるので、甘さが足りない!という方はぜひ原作も読んでほしいな。

細かいカットで行くと、私は、郁のために、査問会の想定問答集作る堂上班がすごく好き。
あと、手塚が「実は俺、すごいブラコンなんだ」って柴崎に言うシーンも可愛くて好き(笑)
それと、原作の稲嶺司令を見送るシーンが印象的だったので、欲を言えばそこも原作の感じで観たかったなあ。


カミツレデートの話

映画のラストカットはカミツレのお茶の画像でしたね。
実は、9月の試写会では、この画像が映し出される中、
岡田くん、榮倉さん、田中圭くん、福士蒼汰くんの4人が声だけで掛け合いを演じてくれたんです。
詳細は公式が全部文字起こししてくださっているので、サイト観て頂ければと思うんですけど(笑)
https://www.toho.co.jp/movie/news/1509/04toshokan-sensou-movie_kh.html

ざっくりこんな感じで演じてくれました。

堂上「時間だ、そろそろ行くか」
郁「え~。もっとゆっくりお茶したかったなぁ…」
小牧「また今度2人で来ればいいじゃない」
手塚「笠原が言えばまた次もあるんじゃないか?」
堂上「みんな待っているんだ。行くぞ!」
笠原「はい!」

このミニドラマのあと、真っ白な光を浴びてキャスト陣のシルエットが浮かび上がり、登場という流れでむちゃくちゃかっこよかったんですよ!

つまり、映画の延長には、カミツレのお茶を飲みに行った堂上と郁がいるわけですよね!
図書館戦争の3作目は、いよいよ郁がメインの最終巻、図書館革命が下敷きになるのでしょうか。

まだ原作で映像にしていないエピソードもいろいろありますし!
とにかく続編も楽しみにしています!



★SPドラマの原作


★映画2作目の原作


★前作の感想
mamekan.hatenablog.jp