小骨の欠片

まめかんの日常。

映画2本立て1200円!初めての新文芸坐

『アルゴ』を見逃したのをずーっと後悔していて、どっかでやってないかなー?と調べて行き着いたのが新文芸坐
新文芸坐公式サイト

新文芸坐は映画が好きで、よく観る方には超有名な映画館なんだと思うけど、わたしは全然知らなかった。簡単に説明すると、昔の名作映画や、半年~数ヶ月前まで公開されていた話題作を主に2本立てで上映している単館系の映画館。

今回見に行ったのは、「騙せ!逃げろ!炙り出せ! 2012年、傑作サスペンス映画2本立て」という企画で、裏切りのサーカス『アルゴ』の2本立て。
タイトル通り2本とも2012年公開なので、それほど古くない話題作。数十年前の名作映画の上映企画はさすがに聞いたことがあったけど、まだまだ新しい映画が「2本立て」「1200円」で観られるのか!とびっくり。ちなみに、1200円は学生料金なので、普通は1300円(笑)
映画館の名前を見たときに、薄暗いような映画館を想像していたけど、全く違った。明るいし入りやすい。椅子や音響含め設備も文句なし。

映画館の中は、ほぼ満席。人気の新作を封切りと同時に観にいかないせいか、ここまで埋まってる映画館を見たのは久しぶりだった。自由席だとは思っていたけれど、予想以上の混み具合に席を確保するのにやや戸惑った。朝一の回だったら少し空いてるのかな。あとは、早めに来てロビーで待つとかかなー。どちらにしても、2本目は次の回のお客さんが入る前に入れ替えで空いた席に移動できるので、よりじっくり観たい作品を2本目に選ぶのがいいかも。
わたしが入ったときの客層は、男性が8割で、40~50代以上の方が多かった。企画内容によってばらつきがあるんだろうと思うけど、映画育ちの方多いような印象。ちらほらと、大学生の友達同士や、中学生の女の子を連れた親子も見かけたけども、一人で観に来ている方が大多数。当たり前のように一人で観に行ったので、一人で来ている方の多さに少しほっとした。

面白いなーと思ったのがロビー。映画好きが集まる場所だからか、映画関連の書籍や昔のパンフレットが売られている。気になるものが多い。思わず買いたくなっちゃうなぁ。
あと、映画をたっぷり楽しめるように、相関図とか、あらすじとか、舞台設定といった事前知識をまとめたボードを用意してくれている。こういうの嬉しいよね。せっかく観るならたっぷり楽しみたいし。特に『裏切りのサーカス』は事前知識がないと置いてきぼりにされてしまいがちだから、この親切がすごく有難い。映画を全力で楽しめるようにしてくれる映画館。本当に映画を観るための映画館なんだろうな。新文芸坐。二本立ての間に15分の休憩が取られているんだけど、ロビーの充実っぷりに、休憩まで存分に楽しめた。

あと、新鮮だったのが予告。新文芸坐でかける映画の予告なんだと思うんだけど、最近の作品のほかに、数十年前に作られた映画の予告がスクリーンで見られる。こんな映画作られてたんだ!とか、これがかの有名な!とか予告まですっごいどきどきした。笑

そして一本目裏切りのサーカス

映画『裏切りのサーカス』予告編
映画『裏切りのサーカス』公式サイト

「サーカス」というのはいわゆるサーカスではなく、イギリスのスパイ組織のこと。これは一回観ただけじゃぜんぜん味わえないんだろうなってことがよく分かった。とにかく頭を使うし、疲れた!!笑
簡単に言ったら、上司と共に干されてクビになったおじいさんスパイが調査を重ね、自身の古巣である、イギリスのスパイ「サーカス」幹部に存在するソ連の二重スパイ(もぐら)を探すという話。
たぶん、セリフを意図的に削っていて、代わりに映像に詰め込まれる情報量が尋常じゃなく多い。にも関わらず、現在と過去、イギリスとソ連の様々な場所を説明なしで行き来する。映像から、舞台設定を理解→人物を理解→意味を理解と、3段階の理解をハイスピードで行ないつつ、時系列順に積み上げて行かないとあっという間において行かれる。笑 
しかも一人ひとりに本名とコードネームがあるし、中盤まで登場人物の変換が出来なくて大変だった……。一応HP見て予習したんだけど、相関図を印刷してくればよかったなーと思ったので、これから見る方は片手に相関図を持つのをおすすめ。

一つひとつの映像が少しずつ繋がっていってラストに向かう作りはすごく好みで、面白かった。セリフが多くない分、頭を使うけど、解釈に幅が生まれて味わい深い。ああ、ここ隠喩だったのか!とか、伏線か!とか、あとからみたらこんな背景が!みたいな体験がすごく多い。観るのすっごい疲れるけど。笑
あと、映像のワンシーンワンシーンもすごくこだわって作ってあるから、普通に撮ったら地味になりそうなシーンがいちいち魅力的でスタイリッシュだった。

印象的だったのは、自分達が最前線で活躍していた、戦争のころが懐かしい、あの頃はイギリスに誇りを持てていた、と言うとある登場人物。
華々しい過去と、何一つ思い通りにならず軽んじられる今の対比に、しんみりしてしまう。登場人物たちや、「サーカス」内部だけでなく、イギリスの現状にも重ね合わせてしまうような映画だった。
評判通り、二回目を観るとがらっと印象が変わりそうで、作りこまれた作品。

二本目は『アルゴ』。

『アルゴ』予告
映画『アルゴ』公式サイト

『アルゴ』は賞レースでも話題の作品。
わたしはこっちのほうが好みだった。いい意味であっけらかんとしていて、分かりやすくベタなんだけど、そのベタに引き込まれる映画。万人受けする、エンタメらしいエンタメ映画。
1979年の11月4日、イランで革命が激化する中、過激派がアメリカ大使館を占拠することから始まる。52人が人質になる中で、辛うじて6人のアメリカ人が逃げ出し、カナダ大使の私邸に匿われる。過激派に見つかったら見せしめとして残虐に処刑されるのは目に見えている状況で、人質救出の専門家トニー・メンデスは、どうにか無事に6人を国外に脱出させようとする。そして、最後にたどり着いたのは、架空のSF映画『アルゴ』を企画し、6人をイランにロケハンに来た撮影スタッフと偽って出国させる作戦だった……。というあらすじ。

こっちはほんとベタなエンタメだから、頭は一切使わずに見れるし、2本目に最適。笑
登場人物もほどよくキャラが立ってるから入り込みやすい。こんな荒唐無稽なストーリーなのに、実際に行われた作戦っていうのがまた面白い。現実は小説より奇なり。
不勉強だから、イラン革命のこととか、全く知らずに見たわけなんだけど、導入の政治的背景の説明がとてもスムーズ。なぜイランで革命が起こっているのか?なぜ反アメリカなのか?等々の説明が堅苦しくなく、すっと入ってきた。
冒頭は、占拠する過程と現状説明なんだけど、数の暴力を感じる。逃げ場も、救助も見込めない中、言葉も分からないけど激昂している過激派に囲まれる恐怖が尋常じゃない。しかも、外には絞首刑になったアメリカ人の死体がクレーンで吊るされているわけで。見つかったら自分もああなる……。その恐怖と、不安がひしひしと伝わってきた。先日のアルジェリアの件とかも思わず重ね合わせてしまった。外国で仕事するってこととか、政治のこととか。いろいろ考えてしまう。

『アルゴ』のスリルは、人質救出が先か、過激派に追い詰められるのが先かに集約されていく。わたしが見た範囲のドラマの中では『ダブルフェイス』の一本目を思い出す感じ。中でも怖かったのが、逃げた6人が顔バレしたら終わりな状況で、シュレッダーにかけられた大使館職員の名簿を子どもたちが少しずつ元に戻していくところ。何にも知らない子ども達が知らず知らずのうちに過激派を支えている映像がなんともリアル。小耳に挟んだ知識が映像に起こされることで、組み合わさって一気に手触りを持つ感覚があった。
そんなスリルの中で、少しずつ仲間としてチームが出来ていったり、はたまた組織の一員としての苦悩があったり、家族愛があったりと、普遍的な題材が描かれながら上手くかみ合い、作戦を遂行していく過程にはヒーローものや少年マンガに通じる高揚感があった。
このあたりがすっごいベタ!!!でも、なんだかんだベタも好きなんだよなー。引き込まれる。笑

ややあざといし、ベタだし、題材が題材なだけに、これが完全にフィクションだったら、リアリティーがない!ご都合主義だ!と一蹴されたかもしれない。このあたりのバランスが監督の手腕なんだろうなぁ。登場人物をスーパーマンではなく地に足の着いた人間として描きながら、アメリカサイドをデフォルメして、イランサイドを出来る限りリアルに映したことと、現実に起こった事件と作戦という史実の力が相まって、微妙なバランスでリアリティーのあるエンタメ映画として成立させた感じ。なんだかんだ、こういうバランスの映画が一番好きかもしれない。

裏切りのサーカス』は好みが分かれるし、リピーターに熱狂的に支持される映画で、『アルゴ』は誰にでも薦めやすい良質なエンタメ映画。カラーは違うけど、どっちもすごく楽しめた。役者さんは両方ともハマリ役。

そして、映画の内容と別に、新文芸坐で映画観るのすっごく楽しかったし、特別な体験になったなぁと思う。自分好みの映画とスクリーンで出会える場所だった。初めて行ったうえに映画好きでもない身で語るのもなんだけど、企画のパッケージの仕方も的確だし、ここでかかってる段階でどこか面白い部分がある作品なんだろうな、と思わせてくれるような信頼の置ける映画館だった。映画を楽しませてくれる映画館。歴史ある映画館らしいのでそれも納得。今年からは新文芸坐みたいな映画館でもっと観たいなと思う。一人映画に抵抗ない方だったら、ほんとおすすめ。

ちなみに、新文芸坐での上映は2/15(金)までらしい。他にも上映しているところはあるけど、どちらにしても映画館で観たい方はお早めに。『裏切りのサーカス』はDVD出てるし、『アルゴ』ももうすぐ出るみたいだけど、映画館で観てよかったなーと思う。
両方とも派手なシーンはそれほどないけど、何より集中出来るし、囲まれた音響が臨場感を一気に増すし、周りの緊張で一緒にはらはら出来て楽しかった。

映画を観るってメジャーな娯楽だけど、こういう場所は知らなかったわけで。いやー、まだまだ知らないことばかりだなぁとしみじみ思った。笑