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小骨の欠片

まめかんの日常。

本が好きだから、私は今日もiPhoneで本を読む

昔から本を読むのが好きで、学生時代は帰りの電車で片道30分〜1時間ほど本を読む生活を送っていました。

とはいえ、それはあくまで学生時代の話で、昨年の春に社会人になってからはめっきり読書から遠ざかっていました。理由はごく単純。電車に乗る時間が片道15分程度に減ったからです。
朝の混み合っている電車では本を開くのも大変で、15分だと出し入れするだけで忙しなく、知らず知らずのうちに本を開かなくなりました。

そんな生活ががらりと変わったのは、昨年の秋ごろのことです。
“カドカワ祭り”という、角川書店Kindle本セールが開催されたことをきっかけに全然買ってこなかった電子書籍を買い漁り、必然的にiPhoneで本を読む生活が始まりました。
それまでは過去記事を見て頂くと分かる通り、"紙派"だったので、電子書籍を食わず嫌いしていたのですが、一週間も経つとiPhoneで本を読む生活も悪くないなぁと感じました。

電子書籍の良いところ
電車に乗っている時間を読書にあてられるようになり、毎日が楽しくなりました。学生の頃の本が身近にある日々が戻ってきたようでした。隙間時間をうまく使えば、一週間3~4冊のペースで本を読めるようになるので、学生時代のピーク時には負けますが読書量が若干あがりました。

最初はiPhoneで本を読むなんて、と思っていました。が、日頃から手のひらサイズの小さい画面で文章を読むことに慣れきった目は、いまさら電子書籍を読んだところで違和感を感じるわけもありませんでした。また、普段からiPhoneで記事を細切れに読むことも多かったため、15分という極めて短い単位で文章を読み続けることにも違和感なし。読みかけのページを正確に保存してくれるために、かえってすんなりと続きを読み進めることができました。
あと、ページ数が多くて分厚い鈍器のような本(京極夏彦先生の本とかね笑)も躊躇せずに電車で読めます。

なによりも快適だったのは、本屋に行かなくても本を買えることでした。
定時で帰れることはほとんどない職場なので笑、本屋は平日にふらっと立ち寄るにしては若干ハードルが高くめんどくさい。
あとは、昔読んで好きだった本を思い出して読むのにも向いています。そこそこ大きめの書店であっても、それほどコンスタントに出ていかないような本は棚に置いてないことがあるんですよね。電子書籍ならば、電車の中で続き物の1巻を読み終えて、すぐさま次の巻を買うことができますし、急に時間が空いた時、昔好きだった本を読み返したい衝動にかられた時、どういうタイミングであっても「本を読みたい」という気持ちをおおむね満たしてくれます。

思いがけず楽しめたのは「0円本」です。国語の教科書に載っていたような名作、数十年前に出版されたロングセラー本やマンガ、最近の人気マンガまでいろいろと0円で読めてしまいます。
ちゃんと名作を読んでおきたい、人気作を試し読みしてみたいという方にも電子書籍おすすめです。シャーロックホームズの英語版なんかもしれっとおいてあるので、無料の本だけでも相当楽しめます。


電子書籍の微妙なところ
電子書籍のめんどくさいところは、○○には売ってないけど、他のところに実は売ってる、ということが多発する点ですね。もちろん、どこにも電子書籍化されていない本もあります。
買おうと思ったときは、横断検索に書籍名を入れて検索するとよさそうです。
Google カスタム検索 - 電子書籍横断検索

あと、電子書籍は想像していたより高いです。電子書籍=安い、というイメージがあったのですが、たいてい定価とほぼ同じくらい。
たまに50%セールとかやっていると金銭面のメリットも感じられますが、普段だったら古本屋に行った方がよっぽど安い。
そのくせ、ワンクリックで買えてしまうのが怖い。笑 自制心が試されます。
手軽に読みたい、は満たされますが、安く読みたいは満たされないかなぁ、という感想です。

また、何を買うにしろ、文字を打ち込んで検索するところから始まるので、好きな作家さん、シリーズの続編、話題の本、と決め打ちで本を買うことが増えます。
もちろん、無料試し読みもできるので、書店には負けるけど中身がまったくわからない、というほどではないです。ただやっぱりなかなか勢いでは買いにくい。書店のように、ポップに惹かれて、とか平積みされていて思わず手に取るとか、フェアで目に留まって、とかそういう博打じみた新しい出会いはあまりないです。
全体的に電子書籍の棚は堅実・保守的になりがち。


電子書籍に向いていない本
食わず嫌いしていたことを後悔するくらい、電子書籍のある生活を楽しんでいるのですが、どんな本も電子書籍で読むのに向いているか、というとそんなことはないです。

仕事の勉強に使う本であるとか、1回読んでしまったら十分な本なんかは、確実に紙で買った方が有用です。使い終わったら売ったり、譲ったりもできますし。
特に、私のようにiPhoneで読む場合は誘惑が多いので、勉強に使うには不向きです。合わない内容だと全然読書に身が入らなくなります。電子書籍を買うときは、書店で買うときよりもさらに厳しめに好きかどうかを精査して買うと失敗しないかなと。

あと、タブレットサイズの端末を持っていないのであれば、マンガは容量が大きく、読みにくくてストレスになるので紙のものをおすすめします。
マンガを読むならKindle(またはほかのリーダー)を買う方が良いかな。

Kindle Paperwhite

Kindle Paperwhite

 

■おわりに
新社会人の半年は、本を読まない日々が続いても気にならないくらい、めまぐるしく刺激的な毎日でした。もしかしたら、本を読まなくても毎日楽しく生きていけるのかもしれないけれど、本を読まなかった半年間を経て、私は本がすぐそばにある生活を選びたいと思いました。
今の生活で、紙の本を日常的に読むのは少しハードルが高い。
それでも本が好きだから、私は今日もiPhoneで本を読んでいます。

「最近、本を読んでないなー」という方は、まず一冊、お手持ちの端末で読んでみてはいかがでしょうか。
本編はここまで。残りはおまけです。



電子書籍を読む人におすすめの本10冊
電子書籍のリーダーはたくさんありますが、今回はKindleに絞って読みやすい小説・ラノベを並べています。私の趣味が偏っているため、たいていミステリーかファンタジー要素を含みます。


☆1冊目:「氷菓」シリーズ

何事もやる気なく省エネに生きたい主人公・折木奉太郎。姉の勧めで入部した古典部で好奇心旺盛な同級生の千反田えるに出会い、彼女の「わたし、気になります!」の言葉によって、学校内の事件に引きずりこまれ、探偵の才能を開花させていく。

学園もの、あるいは青春ミステリーで外せない、米澤穂信さんの「氷菓」。
いわゆる“日常の謎”ジャンルで、人が死なないけれどミステリー要素を含んだ小説ですね。
キャラクターの性格も男女ともに可愛く、巻を重ねるごとに学園ものとしての魅力がぐいぐい増していきますし(学園祭の話とかね!)、2人の関係がどうなるのかも気になるところ。飾らないけれど上質で、穏やかな空気感に油断していると、ときおりぐさりと心にささるのが米澤さんの文章の魅力だと思います。

氷菓 「古典部」シリーズ (角川文庫)

氷菓 「古典部」シリーズ (角川文庫)

氷菓は読んでる!という方には、「小市民シリーズ」を。こちらはつつましい小市民をめざす小鳩くんと小山内さんが何故か謎に巻き込まれてしまうという、学園ミステリー。小市民シリーズの方が若干毒があるかな?とも思います。あと、小山内さんは甘いものが大好きなので、本にもすごーくおいしそうなスイーツの描写がたくさん出てきます。特に2巻目の「夏季限定トロピカルパフェ事件」がむちゃくちゃおなか空きます。あー、食べたい!

 
こちらも読んでいる、という方には、ガラッと変えて「ファンタジー×ミステリー」をきっちり読ませてくれた「折れた竜骨」をどうぞ。米澤さんの緻密さがよく出ている作品です。
折れた竜骨 上

折れた竜骨 上


☆2冊目:「ハルチカ」シリーズ

部員数が少ない弱小吹奏楽部の元気な少女チカと、残念な美少年のハルタは幼馴染。2人して吹奏楽部の顧問を務める謎多き男性教師に恋をしている。恋のライバルとして時にけん制をしながらも、全日本吹奏楽コンクールに出場し、普門館のステージに立ちたいとの思いは同じ。がむしゃらに頑張る楽器初心者のチカと、すこし冷静なハルタ。コミカルな名コンビが個性的な学園内外の人々の起こす事件に巻き込まれていく。

部活動の描写がちゃんとあって、青春の眩しさと少しばかりの寂しさ・切なさも漂い、青春小説として読みごたえがあります。巻が進むにつれて、少しずつ仲間が増え、吹奏楽部も少しずつステップアップしていっています。2人の大好きな先生の過去も気になるところ。そして吹奏楽部は普門館のステージに立てるのか?三角関係の行方は?この先もどうなるのか楽しみです。

こちらもすでに読んでいる、という方には初野晴さんの「漆黒の王子」も面白かったです。こちらは学園ものではなく、裏社会の人が思いっきりでてくるし、暴力描写や残酷描写があります。決して美しい内容ではなく、かなりド派手なシーンも多いのに、初野さんの透明感や、静謐な文章の魅力がたっぷり味わえる不思議な作品。あまり通勤・通学むけではないかも。笑

漆黒の王子 (角川文庫)

漆黒の王子 (角川文庫)


☆3冊目:「配達あかずきん―成風堂書店事件メモ」

「いいよんさんわん」―近所に住む老人から託されたという謎の探求書リスト。コミック『あさきゆめみし』を購入後失踪した母を捜しに来た女性。配達したばかりの雑誌に挟まれていた盗撮写真…。駅ビルの六階にある書店・成風堂を舞台に、しっかり者の書店員・杏子と、勘の鋭いアルバイト・多絵が、さまざまな謎に取り組んでいく。本邦初の本格書店ミステリ、シリーズ第一弾。

昨今注目の書店ミステリーですが、私はこのシリーズが一番好きです。本好きなら一度は本屋さんのアルバイトを考えた経験があると思うのですが、この本を読むとあたかも書店員のバイトを始めたような気持ちになれるくらい、いわゆる「仕事もの」としてもリアルで読み応えのある作品です。
舞台となる本屋が「こういうところあるある!」と思うような一般的な本屋さんなのもポイントが高いです。本屋に行くのがもっともっと楽しくなる一冊。


「成風堂シリーズ」を読んでから、ついでにこちらのtogetterを読むとさらに面白いです。
#書店員死亡かるた - Togetterまとめ


☆4冊目:「インディゴの夜」シリーズ

「クラブみたいなハコで、DJやダンサーみたいな男の子が接客してくれるホストクラブがあればいいのに」―すべては女性ライター・高原晶が、大手出版社の編集者・塩谷に漏らした何気ない一言から始まった。謎めいた美形の敏腕マネージャー・憂夜の助力を得て、二人は一風変わったホストクラブ“club indigo”を渋谷の片隅に開いたが、順調な経営とはうらはらに常連の客が殺され、店のナンバーワンに疑いがかかる。晶は個性豊かなホストの面々とともににわか探偵団を結成、真犯人捜しに奔走する!第十回創元推理短編賞受賞の表題作がシリーズ化。スタイリッシュでウイットあふれる新世代探偵小説、ここに登場。

石田衣良さんの池袋ウエストゲートパークを思い出させる、とよく言われるのですが、舞台となる街が“渋谷”なだけに、ドライであっけらかんとしていて、だいぶ違う印象を受けると思います。
登場人物たちも一癖ある人ばかり。個性豊かな彼らのドタバタ探偵っぷりが楽しい短編です。
加藤実秋さんは観察眼がとても鋭い作家さんで、道行く人や風景のちょっとした描写の切り口がいつも面白く、さらりと切れ味鋭い文章は読んでいるだけで心地良いです。
短編なので隙間読書にもぴったりですね。本当に気負わず楽しめる作品です。

インディゴの夜 (集英社文庫)

インディゴの夜 (集英社文庫)

 
あと、加藤実秋さんの作品なら、北川景子さん主演でドラマ化もされた、ワケあり物件の清掃会社に就職した主人公が奮闘する「モップガール」もおすすめです。イケメンだけど無愛想な先輩、翔との掛け合いも楽しい。
モップガール

モップガール


☆5冊目:「カブキブ!」

高校一年の来栖黒悟(クロ)は、祖父の影響で歌舞伎が大好き。歌舞伎を部活でやってみたい、でもそんな部はない。だったら創ろう!と、入学早々「カブキブ」設立を担任に訴える。けれど反応は鈍く、同好会ならと言わせるのが精一杯。それでも人数は5人必要。クロは親友のメガネ男子・トンボと仲間集めを開始。無謀にも演劇部のスター、浅葱先輩にアタックするが…!?こんな青春したかった!ポップで斬新なカブキ部物語、開幕!

歌舞伎に興味はあるけども、どう楽しめばいいのか、どこから手を付けていいのか、いまいちピンと来ていなかったりします。「カブキブ!」に出てくる登場人物も大半はそんな人たちで、むしろ「歌舞伎のどこが面白いんだ」というスタンスがほとんどの中で、それを覆していこうとするこの作品は"歌舞伎初心者"の入口としても手厚いです。
歌舞伎界の状況、歌舞伎の見どころ、演目、実際に歌舞伎を観るには?というところまで、ストーリーにきっちり盛り込まれていて、途中、クロが歌舞伎のことをあまり知らない友人を連れて、実際に歌舞伎を観に行くシーンも面白いです。
初心者の友人の目線ももちろんですが、何よりも「このチャンスをものにして、どうにかして歌舞伎の魅力を知ってほしい!」と奔走する主人公が熱い。演目や席に迷い、終演後「本当にこの演目でよかったのか」と問いかけながら友人たちの感想を聞き出す緊張の一瞬もリアル。そんな主人公の姿には、どのジャンルのオタもきっと共感できるはず。いちジャニオタとしては、興味がなかったはずの周囲をグイグイ歌舞伎に引き込む主人公の行動力と有能さがただただ眩しい。笑
魅力的な部員が少しずつ加わり、学園ものとしての面白みがどんどん増しつつある「カブキブ」。
口当たりよく、読みやすく、青春も歌舞伎もたっぷり詰まったハイテンションな快作です。


☆6冊目:カラット探偵事務所の事件簿

あなたの頭を悩ます謎をカラッと解決いたします! 浮気調査や信用調査などを扱う普通の私立探偵とは異なり、謎解きだけを専門に扱うカラット探偵事務所。 探偵・古谷と助手・井上は毎回事件現場を訪れ、持ち込まれた事件を鮮やかに解決する! ファンとのメールのやりとりから作家の夫の浮気をあぶり出す「卵消失事件」、武家屋敷と呼ばれる豪邸で建物に突き刺さった矢が次々と見つかる「三本の矢」、祖父が作ったという三つの和歌から屋敷内に隠されたお宝を掘り当てる「兎の暗号」、差出人不明の手紙に同封された写真から父の居場所を見つけ出す「別荘写真事件」、団地内に配られた住人の不倫を告発する怪文書の謎を解く「怪文書事件」、古谷と井上の同級生の結婚式で、新婦の父親から風変わりな相談をされる「三つの時計」の6つのファイルを収録。

イニシエーション・ラブ」や「リピート」など、派手な作品が目立つ乾くるみさんですが、持ち前の構成力を活かし「日常の謎」路線の少し捻った短編集連作も得意としています。特にこの「カラット探偵事務所の事件簿」はキャラクター・内容ともにエンタメ色が強く、読み手を選びません。短編なので通勤・通学にもおすすめです。

カラット探偵事務所の事件簿 1 (PHP文芸文庫)

カラット探偵事務所の事件簿 1 (PHP文芸文庫)


☆7冊目:「GOSHICK」

前世紀初頭、ヨーロッパの小国ソヴュール。極東の島国から留学した久城一弥は、聖マルグリット学園の図書館塔で奇妙な美少女・ヴィクトリカと出会った。彼女の頭脳は学園の難事件を次々解決してゆくが、ある日ヴィクトリカと一弥は豪華客船に招待され、そこで本物の殺人事件に遭遇してしまう。やがて彼ら自身に危機が迫ったとき、ヴィクトリカは―!?直木賞作家が贈る、キュートでダークなミステリ・シリーズ。

桜庭一樹さんが書いた、ラノベらしいラノベ。ミステリーとは言いつつも、タイトル通りゴシックな雰囲気や、一弥とヴィクトリカ2人の関係がメイン。序盤はじわじわと距離を縮める2人の感情の変化が、後半は戦争で引き裂かれていく2人の行く末がみどころ。1冊1冊はたしかに軽いのですが、シリーズ9冊を通して読むとバラバラに読んだときよりもグッとくるものがありました。シリーズとして一本筋の通った作品です。


☆8冊目:「グラスホッパー

「復讐を横取りされた。嘘?」元教師の鈴木は、妻を殺した男が車に轢かれる瞬間を目撃する。どうやら「押し屋」と呼ばれる殺し屋の仕業らしい。鈴木は正体を探るため、彼の後を追う。一方、自殺専門の殺し屋・鯨、ナイフ使いの若者・蝉も「押し屋」を追い始める。それぞれの思惑のもとに――「鈴木」「鯨」「蝉」、三人の思いが交錯するとき、物語は唸りをあげて動き出す。疾走感溢れる筆致で綴られた、分類不能の「殺し屋」小説!

どの書店でも猛プッシュされているし、有名すぎるのでいまさらですが、せっかく映画化されるので。笑
今作は、殺し屋が大量に出てきます。デフォルメされているはずなのにどことなくリアルな犯罪を描きつつ、エンタメに振り切っている印象です。飄々とした登場人物に、ウィットのきいたやり取りは伊坂さんならでは。登場人物それぞれの視点を切り替えながら話が進み、最後になって「そういうことだったのか!」となる構成の妙が光ります。
悲しいのになぜかコミカル。
伊坂幸太郎作品らしい魅力がふんだんに盛り込まれた一冊です。


ちなみに、私は伊坂作品ならデビュー作「オーデュボンの祈り」が一番好きです。

オーデュボンの祈り (新潮文庫)

オーデュボンの祈り (新潮文庫)



☆9冊目:「獣の奏者」シリーズ

獣ノ医術師の母と暮らす少女、エリン。ある日、戦闘用の獣である闘蛇が何頭も一度に死に、その責任を問われた母は処刑されてしまう。孤児となったエリンは蜂飼いのジョウンに助けられて暮らすうちに、山中で天を翔ける王獣と出合う。その姿に魅了され、王獣の医術師になろうと決心するエリンだったが、そのことが、やがて、王国の運命を左右する立場にエリンを立たせることに…。

上橋菜穂子さんの本をまったく読んでいない、という方はあまりいないかと思うのですが、「獣の奏者」は特にすさまじかったので、ぜひ電子書籍でも。
上橋さんの書いたファンタジーの中でも相当重い部類だと感じます。紙が似合う内容ではありますが、巻数も多くて分厚いこともあり電子書籍向け。
「獣」をじっと観察し、あきらめずに向き合い続けたエリンの強さに背中を押され、彼女の目に映る美しく可愛く楽しい生き物の描写にわくわくさせられる一方で、ふとした拍子に自然に生きるものたちの怖さを改めて突きつけられる作品です。
上橋さんらしく、宗教周り・政治周りは今回もきっちり書かれています。
巻を重ねるにつれて、生も死も、より一層シビアに描写されていくので、読み進めるのが辛くもありますが、節目節目で読み返して、その時々の心に響かせていきたい一冊。

獣の奏者 I闘蛇編 (講談社文庫)

獣の奏者 I闘蛇編 (講談社文庫)


☆10冊目:「ぼくのメジャースプーン」

ぼくらを襲った事件はテレビのニュースよりもっとずっとどうしようもなくひどかった――。ある日、学校で起きた陰惨な事件。ぼくの幼なじみ、ふみちゃんはショックのあまり心を閉ざし、言葉を失った。彼女のため、犯人に対してぼくだけにできることがある。チャンスは本当に1度だけ。これはぼくの闘いだ。

主人公は小学四年生の男の子。一見目立たなくて平凡(というにはいささか理解力が高すぎる)な男の子ですが、実は特殊な能力を持っています。
使い方によっては、誰にも気づかれずに犯人を殺せてしまうかもしれないような力を持った「ぼく」は、犯人に復讐しようと考えます。そして「ぼく」は同じ能力を持つ大人、秋山先生との対話の中で、なぜ犯人が許せないのか?犯人の犯した罪とは何か?その重さに見合う罰とは?と様々なことを深く、深く考えることになります。
語り部が幼いだけにするっと読めてしまうし、主人公とおさななじみのふみちゃんのやりとりはとても魅力的。それだけに、テーマは重いです。
大人になったって答えが出ないような問いに「ぼく」がどんな答えを出すのか。
その答えも含めて、奥行きのある作品だと思います。
 

■さらにおまけ
完全に私の趣味全開の本(ラノベ)を少し紹介。

☆「カーリー」シリーズ

第二次世界大戦前夜、故郷ロンドンを離れ、英国統治下のインドへと渡った14歳のシャーロット。駐在英国人の子女が通うオルガ女学院の寄宿舎で出会ったのは、神秘的な美少女・カーリーガードと個性豊かな仲間たちだった。

インドにフォーカスをあてて戦争を考えたことはなかったのですが、これを読み進めるうちに当時のインドの複雑さや世界情勢、風俗がなんとなくわかった気になれて面白いです。最初は王道をひた走る少女向けラブコメ色が強かったのですが、巻が進むにつれて、戦争・政治色が強くなっていくので、どう着地していくのかが気になるところ。
文章がコミカルすぎるので、苦手な方は苦手かも。


☆「空の境界

2年間の昏睡から目覚めた両儀式が記憶喪失と引き換えに手に入れた、あらゆるモノの死を視ることのできる“直死の魔眼”。式のナイフに映る日常の世界は、非日常の世界と溶け合って存在している……! もはや伝説となった同人小説から出発し、“新伝綺”ムーブメントを打ち立てた歴史的傑作――。

内容・文体ともにレビューでも「人を選ぶ」と決め台詞のように書かれています笑 比較的残酷描写も多め。
全3巻で、時系列も行ったり来たりするちょっと凝った構成なので、せっかくなら全巻読んでみてほしいなと思います。
何が面白い、とはっきり言うのは難しいので、詩的・哲学的な言い回しが嫌いでなければまずは無料試し読みをダウンロードしてみてください。笑


☆「狼と香辛料

行商人のロレンスは、馬車の荷台で麦の束に埋もれて眠る少女を見つける。 少女は狼の耳と尾を持つ美しい娘で、自らを豊作を司る神・ホロと名乗った。 「わっちは神と呼ばれたがよ。わっちゃあ、ホロ以外の何者でもない」 まるで経験を積んだ大人のような話し方で、ロレンスを巧みに翻弄する少女。 「お前は、本当に神なのか?」 最初は半信半疑だったロレンスも、やがてホロが旅に同行することを承諾する。 そんなふたりの旅に、思いがけない儲け話が舞い込んでくる。 近い将来、ある銀貨が値上がりするという噂。 疑いながらも、ロレンスはその儲け話に乗るのだが……。

主人公が商人でヒロインは狼という、一風変わった設定。
信用経済がはじまったばかりの舞台設定で、自分の店を持つという夢を抱きながら旅をし、知略をめぐらせてお金を稼ぐ主人公。
お金や経済活動に軸足を置いた、いぶし銀のような良質なファンタジー。特に一巻は綺麗にまとまっているのでおすすめ。


この記事は、機会をみつけて更新していきたいと思いますが、一旦以上です。
2015年も楽しく本を読んでいこうと思います!